ポケモンカード欲しさに親の財布から1万円盗んだ小3の息子 どうやって俺は子供と向き合ったか?【村橋ゴロー】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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ポケモンカード欲しさに親の財布から1万円盗んだ小3の息子 どうやって俺は子供と向き合ったか?【村橋ゴロー】

 

「あのな、お父さんやお母さんの財布からお金を盗むってことは、一番しちゃいけないんだ。お父さん、ほんとキツイ思いしてお金を稼いでるんだ。それを盗らないでくれ」

 俺は51にして、時給1200円のバイトで食っている。某宅配チェーンに籍を置き、雨風の日もバイクを運転し、客に食べ物をを届けている。客に罵られたり、台風の日には死ぬ思いもする。それに耐えながらなけなしの金を稼いでいる。だから盗らないでくれ。本音だ。そして、続けた。

「あのな、正直言うと、お父さんもお前と同じくらいの年のころ、親の財布からお金を盗んだことがあるんだ。だからお前の気持ちも、お父さんわかるんだ」

 え? ほんと? という表情を浮かべ、話に興味を覚えたのが見て取れた。「共感」という話法だ。続ける。

「でもな、それを2回3回とやっちゃダメなんだ。一回はしょうがない。だからもう盗むのはやめてくれ」

 高校生になってもオヤの金をくすねまくってたヤツの、どの口が言ってるの? という話だが、でもそれが親の仕事だ。俺がクズだったからお前もクズに育ってもNO問題! というわけにはいかないのだ。

「何かほしいものがあったら、ひとりで悩まないで俺に相談してくれ。すぐ買ってあげられないかもしれないけど、何とかするから。だから俺に相談してくれ」

 そう、何かほしいものがあっても稼ぐ術を持たない子どもは、その小さな胸を痛めて悩むのだ。その結果「やむにやまれず」「補充」するのではなく、俺に相談してほしい。これは瞬時に口から出た本音だった。

 子どもは天使じゃない。生まれたときはもちろん天使だったが、汚くも素晴らしい世界に触れ、少しずつ人間になっていく。天使として生まれた息子は9年間の生のなか、悪事を覚えた。そんな季節を迎えただけなのだ。その成長の季節が夏なら冷たい飲み物を手渡すし、寒い冬ならマフラーをその首にそっとかけてあげる。俺は大した人間じゃないから、そんなことしかしてあげられないけど、愛してることだけはわかっていておくれ。どんな悪事をしようとも、そりゃ最初は思いっきり叱るけど、最後は守ってあげるから。死んでもお前の見方だから。

 併せて、通わせているくもんを、ここ3ヶ月ほど無断欠席していることが発覚した。行きたくないから、行かないのだろう。彼はどうしたいのか? そして俺はどうすればいいのか? 彼はいろいろと、揺れる季節を迎えている。

 それは、やっと思春期の、オトナへの入口にたどり着いただけなのだ。これからは、もっともっと大きな敵と戦わなければいけない、それが「対エロ」だ。男の子にやってくる、身も心も侵食されてしまうエロとの戦い。そんな季節を彼が迎えたとき、xvideosがいまだ右手の友達な俺はどう、しれっと真っ当なことを言えばいいのか……子育て、怖っっっわ!!

 

文:村橋ゴロー

 

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村橋ゴロー

むらはし ごろう

ライター

1972年生まれ、東京都出身。ライター・コラムニスト&主夫。大学生でライターデビューし、男性誌・女性誌・漫画誌・学年誌など幅広い分野で活躍。現在は千原ジュニア・田村淳・高橋克典など、多くの芸人・タレントの連載や書籍の構成を務めている。自身の3年にも及ぶ不妊治療体験を綴った、近著『俺たち妊活部』(主婦の友社刊)が好評を博す。

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  • 村橋 ゴロー
  • 2016.02.10